古生物・イラスト
ユージンギア(Yujingia)はどんな生き物?
ユージンギアは約5億1800万年前の海に暮らしていた小さな動物です。柔らかい体の上から羽のような腕が伸びているのが特徴です。
少し植物のようにも見えますが、この腕で水中の食べ物を集めていたと考えられています。
今回は2026年に発表された論文をもとにユージンギアについてわかったことや気になったところを紹介します。
1. ユージンギアとは
ユージンギア(Yujingia glutenotunica)は中国の雲南省で化石が見つかったカンブリア紀の動物です。中国語では「胶膜玉净虫」と呼ばれ「玉净虫」と紹介されることもあります。
カンブリア紀は今から5億年以上前のさまざまな動物が海に現れた時代です。
今回の研究で調べられた化石は4点で、大きさは約8.5〜22ミリメートル。大きなものでも2センチほどでした。
化石が見つかった澄江(チェンジャン)という地域では普通なら腐ってなくなってしまう柔らかい体の部分まで化石として残ることがあります。ユージンギアにも腕の細かなつくりが残っていました。
2. どんな姿をしていたのか
体は細長い袋のような形で上の部分から6本の腕が伸びていました。それぞれの腕には細かな枝が並び、鳥の羽に少し似ています。
腕の内側には細い溝があり、根元にはひも状の細長い部分もありました。硬い殻や骨格は見つかっておらず、柔らかい体だったと考えられています。
ユージンギアという名前はその姿が観音菩薩の持つ水入れ「浄瓶」に似ていることに由来するそうです。
3. 何を食べていたのか
ユージンギアは水中に漂う小さな食べ物を集めていたと考えられています。
羽のように枝分かれした腕を広げれば、水に触れる部分が多くなります。そこで食べ物を受け止め、腕にある溝に沿って口へ運んでいたのではないかというのが論文で紹介されている考えです。
今の海にも似た食べ方をする動物がいます。その一つがウミシダです。植物のような名前と姿ですが、ヒトデやウニと同じグループの動物で羽のような腕を広げて食べ物を集めます。
ユージンギアの腕にもウミシダの腕と似たつくりがあるそうです。ユージンギアがウミシダそのものの仲間というわけではありませんが、食べ方を想像する参考になります。
今回私が描いたイラストでも部分的にウミシダを参考にしていました。
4. 海底ではどう暮らしていたのか
論文ではユージンギアが海底近くで体を支えながら腕を広げていたのではないかと考えられています。
腕の根元にあるひも状の部分は体を安定させたり一時的に海底につかまったりするのに使われた可能性があります。ただその使い方までははっきりわかっていません。
体を支えて流れてくる食べ物を腕で集める。そんな暮らしを想像すると、変わった形の腕にもなるほどと思えるところがあります。
5. ヒトデやギボシムシとのつながり
ヒトデやウニにはギボシムシという遠い親戚がいるそうです。ギボシムシは海に暮らす細長い虫のような動物です。見た目はかなり違いますが、ずっと昔までさかのぼると同じ祖先につながります。
その祖先がどんな姿だったのかについてはいくつかの考えがあります。論文によるとこれまでは祖先もギボシムシに似た姿で、のどの部分を使って水中の食べ物をこし取っていたと考える説がありました。
今回の研究ではユージンギアがその共通の祖先に近い仲間だった可能性が示されました。ユージンギアには羽のような腕と溝があるので、祖先も腕や触手を広げて食べ物を集めていたのではないかと考えられています。
今のギボシムシに似ていたと思われていた祖先が、実際には少し違う姿や暮らしをしていたのかもしれません。
ユージンギアがヒトデやギボシムシの直接の祖先だったとわかったわけではありませんが、今ではずいぶん違う姿をした動物たちにこんなつながりがあるのは面白いと思いました。
6. おわりに
ユージンギアについてはまだわからないこともあります。見つかっている化石は4点で、詳しい暮らしぶりも残された体の形から考えられたものです。
それでも腕の細かな枝や溝まで残っていたことで、何をしていた動物なのか少し想像できるようになっています。
海底近くで腕を広げていた不思議な生き物が今生きている生き物の遠い祖先について考えるきっかけになるところがユージンギアの面白さだと思います。